Field Note

「ああ、なるほどね」を”おすそ分け” 国際協力、食、農業、経済、東南アジアを主とした雑記。

元公務員が天下りの問題点について説明します!

最近(2017年1月時点) 文部科学省OBの早稲田大学への天下りが問題になってますね。

 

今に始まった話ではなく、過去には複数の天下り先で退職金をもらう”渡り”が問題になったり、世間では官僚をはじめとする公務員の天下りが問題視、批判されてきました。

天下りの禁止、規制や関連する法律の議論も定期的に起こっています。 

 

でも天下りってそもそも何が問題なのでしょうか?

 

天下りとは分かりやすく言うと、

 

役人が退職してOBOGとなったあと、それまでの知識やスキルを活かして、今度は公務員以外の組織(外郭団体や民間企業など)に再就職すること

 

です。

 

民間だって退職後、それまでの知識やスキルやコネクションを活かして再就職したりするわけで、公務員だけが問題視されるのはなぜでしょうか?

 

今回の事件(文科省OBの早稲田大学への再就職)も、文科省OBが仕事で得た知識やスキルを活かすべく、大学に再就職したのなら何が問題ないのではないでしょうか?

 

実は公務員の再就職それ自体には何も問題はありません。

 

公務員のキャリアの中で身につけたスキルを活かして再就職したからといって、別に誰が不幸になるわけではなりません。

 

では何が問題かと言うと、

 

天下りの結果税金の使い方などが歪められ、国民に不利益が生じる

 

からで、これは例えば次のような場合です。

 

 

<役所OBの再就職先の組織が、OB排出元の省庁からOBを受け入れることにより、優先的に許認可や交付金などの利益を受けているケース>

 

抽象的なので噛み砕いて説明しますね。

 

例えば、一般的に大学や研究機関は文部科学省からいろんな補助金等を受け取っています(実際に今回の件で早稲田大学が受け取っていたかは別として)。

 

もちろんそうした補助金等の配布は、文部科学省が客観的な基準に基づき、”公平”に審査された上で行われるわけですが、

 

マークシートのテストのようにマルバツで判定できるようなものではなく、どうしても判断する側の主観が入らざるを得ません。

 

そもそもその判定の基準自体を特定の団体に有利なように変更することだってできる(スポーツのルールが変えられるように)わけで、

 

客観的と言いつつも、その基準や審査などのルールについては所管している官庁の意向を強く反映させることができます。

 

そもそも、審査員や、委員により、適切に審査した、なんていっても、そもそもその審査員や委員を選ぶ段階では役所の意向が反映されるわけで、”完全に客観的で公平な選定”なんて幻想であることがわかります。

 

このような状況ですから、補助金等を受けたい組織はルールを決めている所管官庁とパイプを作りたいと思います。

 

官庁にパイプがある人間がいれば、その人間を通して自分たちの組織に有利になるよう、(補助金等の配布をはじめとした)各種施策への干渉ができるからです。

 

仮に受け入れた人間が、全く仕事のできない、毎朝出勤して日がな新聞を読んでるだけのような職員で、

 

そんな職員に、例えば年収1000万円の給与を支払ったとしても、

 

それを補って余りある金銭的、非金銭的なメリットを受けられるので、官庁OBを受け入れるメリットは十分にあるわけです。

 

 

本題に戻りましょう。

この体制の何が問題なのかと言うと、本来社会全体のために使われるべき資金の配布等の審査が(本来は別の組織に配布されるはずだったかもしれないお金が)特定の組織に流れ、その一部が天下りOBの給与に流れてしまうことにあります。

 

資金が本来の目的に使われるのならいいですが、実際は、天下った役人の給与にその一部が使われるわけです。

 

絵にすると下図のようになります。

本来の補助金などに上乗せして、価値を生み出していない天下りOBの給与分が支払われているわけです。

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 上図で資金の多くは補助金等本来の目的に使われる(と願っている)わけですが、

 

その一部が天下りしたOBに流れており実情は、

 

官庁が退職したOBの給与の支払いを他の補助金等と抱き合わせで天下り先に押し付けている

 

わけです。

 

今回の事件で言えば、

 

文科省のOBが大学に天下ることによりえ大学は文科省とのコネクションを作り(文科省へ貸しをつくり)、その見返りに補助金などを得やすくする

 

ということでしょうか。

 

こう書くと、

 

天下り役人ゆるせん!!

 

って思いたくなりますが、事情はもう少し複雑で、

 

実際には、それまでのキャリアの中で身につけた知識やスキルを活かして、給与に見合う活躍をしているOBの方も少しはいるはず(と思いたいです、一納税者として…)

 

と言うわけで、初めに書いた通り再就職自体が悪なのではなく、

 

再就職を絡めた利害のやりとりが良くない、と言うことです。

 

じゃーどうすんのよ、って話ですが、

 

公務員は再就職するにしても求人の一般公募へ申し込み選考結果も公表するとか、補助金等の申請を申請する組織が所管官庁のOBを抱えている場合は、その名簿を公表するとか、再就職に絡めた利益の供与について透明性を高めることが大切ですね。

 

ちなみに、JICA(外務省の外郭団体)は、JICAの幹部が民間企業へ再就職する場合、民間企業がJICAの事業に入札することに対して一定の制限をかけています。

 

OBが天下り、その口利きで仕事をとる(仕事をとるためにOBを受け入れる)ようなことが起きないようにするためのしくみですね。

 

 

もちろん他にも利害が絡むパーンは色々あるわけですが、長くなるのでこの辺で。

 

 

世の中の仕組みって複雑ですね。

 

公務員の裏側とかをわかりやすく知りたい人にはこのマンガオススメです。

 

現在官僚系もふ(1) (ビッグコミックス)

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